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成功したいに決まってます。『2009年8月号Way To The Top』より

創業したばかりの人も、ずいぶん長く経営を行っている人も、経営者である以上は、あらゆる意味で、成功したいに決まってます。いや、むしろ成功しなければなりません。運命をともにしてくれている仲間がいるのですから。

三枝匡(さえぐさ ただし)という方をご存じですか?もちろん知ってますよね。1967年に三井石油化学工業に入社、その後、ボストン・コンサルティング・グループを経て、3つの会社の再建にかかわった経営コンサルタントで、コンサルタントから経営の実践に転じて成功したまれな方です。現在は株式会社ミスミグループ(一部上場)の会長兼CEOに就任されています。この三枝氏が三冊のビジネス書を書いています。自らの経験を小説に仕立てた書籍です。今回は、この三冊の本の中からテーゼとなっているものをピックアップして取り上げてます。

悲劇
事業の狙い目が正しく、時流に乗ると、社長の経営力とは関係なく事業の急拡大が始まります。それを自分の実力だと思うところから悲劇が始まります。
小規模組織から急拡大する時の経営の危機は「起業家の能力アンバランス」が原因となります。経営陣に強いナンバ2がいるとか、起業家がスタートする前に経営経験を積んでいたのなら問題はかなり軽減されますが、たいした経験もないのにハイリスクの高成長事業の展開を目指したとすれば、飛行機の操縦方法も知らないのに、たった一人で飛行機の操縦席に座っているのようなものです。これを回避するには2つの方法がある。一つは、ゆっくりと行く。二つめは、十分な経営経験を持った人と組むことです。
しかし、経営経験豊富な人と組み、経営に参画してもらったとしても、リスク思考の社長は「常に全力で前進」であり、会長は止め役ばかりやらされることとなり、やがて社長は、会長がうるさくて仕方なくなり、追い出しにかかる。たとえ有能な部下がいても、聞く耳を持たなくなったワンマン社長を止めることは不可能です。優秀な者はただ去っていくだけです。不毛ですし、悲劇です。

慢心の時期
自分は絶対そんなことはないと考えていたとしても、必ずその時が訪れます。小さな成功で得意になった社長には、なお質が悪い。一転業績が悪化すると、社長は責められ、部下はバカにしてやめていき、銀行は近寄らなくなる。
幸い会社の業績が上がれば、「良い経験」と笑うこともできますが、ほとんどの場合、そのまま業績は戻らず、倒産となり、その後にどんなに反省しても再起は難しいのが現実です。

権限委譲による第二段階
自分で何もかもできないと悟った経営者は、自分の得意でない分野から権限委譲を進めます。
しかしこれは、創業経営者にとって苦痛です。なぜなら待たされるからです。これまでであれば、決断をすればい良いだけなのに権限委譲したからには、担当者からの報告・相談を待たねばならないからです。これにイライラして口を出すと、担当者は育つわけがありません。
予算管理や計画などのシステムは、権限委譲と同義ということを忘れてはなりません。
部下の目標や評価基準をはっきりしておけば、部下の行うべき事がはっきりする。これがはっきりしていないと、部下は何をしていいかわからないし、社長は部下が何をするかわからないから権限委譲ができず、部下は成長もできず辞めていくといった悪循環に陥いります。

会社の体質と戦略的事業計画
会社に事業計画が定着しない、権限委譲が進まない。
これには、3つの理由が考えられます。
1 社長が部下の立てたプランニングに興味がない。
2 社長の方針がころころ変わる
部下は、計画を立てるのがそのうちバカらしくなってきます。
3 サラリーマン根性の染みついた会社で、つじつま合わせの計画しか出てこない。
成功へ導くため行動計画に、リスクがないなら、無い方がましです。
社内にプランニングを定着させようと思うならば、まず社長自身が自分の考え方や事業の枠組み、将来の方針などを明るく語り、何年間かそれにこだわり続けることが必要です。それに対応して部下にプランを立てさせ、しつこくフォローすることが必要です。

戦略は、役に立つか
立てられた事業戦略がどんなにすばらしくても、実行できなければ、絵に描いた餅であり、企業にとって有害である可能性もあります。
成功する戦略は、会社の体力を考えてまず、「戦いの場」を絞ること。社内のエネルギーを集中させること、その集中を実行するために、組織に対して「無理を強いる。」「不安を感じさせる」という側面を必ず持っています。

意図的に組織を揺さぶる
実績によるプランニングは、勝者の論理である。もともと大した実績もない企業が、過去の実績や経験に基づいて将来の売上予想をしたとしても、大した変化を起こすことできません。実現可能か不可能かは、横に置いておいて、「これぐらいやらないとまずい!」、「これくらいやらないと成功とは言えない。」という数字を出してしまうやり方です。
打ち出された目標と組織の力量にはギャップがあります。そのギャップを埋めるための新しい戦略を考えることが一番大切です。

良い戦略
良い戦略とは、単純明快でなければなりません。
また、集中するということは、捨てるということ
良い集中は、しばしば従来の社内の常識を破るものです。従って良い集中は、営業マンから不平の出る宿命を背負っています。つまり新しい顧客に会わなければならないからです。言い換えれば現在営業マンが訪問できていないところを攻めるということでもあるからです。営業マンが惰性で行きたがる顧客は、企業に取ってありがたくない顧客である可能性もあります。「今まで当社を支持してくれた顧客を大切にしなくてはいけないのではないでしょうか?」という言葉に屈してしまっては、成長は見込めません。何故なら、今の体たらくを作り出している顧客をどんなに大切にしたところで成功しないからです。

しつこいフォロー
良い戦略を立てたのに効果が見えない。原因は、その良い戦略が実行されてないのでは?
絞り込んだターゲットに対して、本当にアプローチされているのだろうか?ターゲットとされた顧客との間で問題が発生しているとすれば、どのような問題なのか?成果は上がりつつあるのか?止まっているのか?ダメになりそうなのか?を報告させるシステムが必要で、その報告に基づいてしつこくフォローする必要がある。

競合相手
「競争相手の存在を常に意識しているか?」といわれれば、「そんな当たり前なこと」といいたくなりますが、実際に本当にいつも考えている人は、どれほどいるでしょうか?すばらしい競争相手がいるから、その競合相手を負かしたいから、顧客に対してもっとすばらしいサービスを提供したいから努力するのではないですか?
競合者を横に置いて、会社の中のことばかり考えていませんか?

頭を整理するツール
三枝さんは、ボストンコンサルティンググループ出身ですから、PPMを上手に使って、これからしようとすることや、現状の分析を行っています。
今回はこのPPMをどのように使っているかを説明しようと思って、書き始めたのですが、そこに至る前に紙面が足りなくなりました。次回に譲ることとします。
いずれにしろ、今回参考文献とさせていただいた書籍は、小説仕立てで読みやすく、おもしろい本ですので、是非読んでみてください。

参考文献
『V字回復の経営-2年で会社を変えられますか-』三枝匡著 
『経営パワーの危機-会社再建の企業変革ドラマ』三枝匡著
『戦略プロフェッショナル』三枝匡著

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